京大生が斬る!プロ野球・阪神

京大生で、熱烈な野球ファンのたまてつです。当ブログでは、阪神タイガースを中心にプロ野球全体を様々な視点から観察していきます。

「2番(最)強打者説」について 「クリーンアップの移動」という新たな考え方

この記事では、「2番(最)強打者説」について論じます。数年前にアメリカから伝わり、流行りそうで流行らないこの説について、筆者なりの理解を示したいと思います。

 

筆者もこの「2番(最)強打者説」、悪くないとは分かっていても、受け入れられない自分もいるという状態が続いていました。ですが、最近、自分なりの解釈も加えて、この説がある程度腑に落ちるようになったので、その見解を示していきます。

 


まず、大前提からお話しさせて頂くと、この議論の背景には2つの確立した論があります。

 

①1番打者は、高打率(高出塁率)で俊足。
②3・4・5番打者は、強打者でクリーンアップと呼ばれる。

 

という論です。この2つの前提に立った上で成り立つのが、2番打者についての

 

<1>伝統的通説

 

とも言うべき説です。一方で、「2番(最)強打者説」と呼ばれる説はこれらの前提のうち②の立場には立っていません。このことをまずご理解頂きたいと思います。そのうえで、もう一つ重要なことは、先ほどから「2番(最)強打者説」などというけったいな書き方をしているのには理由があるということです。一括りに「2番(最)強打者説」と言われることが多いのですが、この説の中には、

 

<2>2番最強打者説
<3>2番強打者説

 

の二つが含まれています。そのため、(最)と書いています。これを前提として、以下お読み頂ければ幸いです。

 


では、ここからは<1>伝統的通説、<2>2番最強打者説、<3>2番強打者説の3説についてどういう理由でこれらが主張されているのか、その主張は果たして正しいのかをそれぞれ検討していきたいと思います。

 


<1>伝統的通説


日本のスモールベースボールを体現するような伝統的通説では、2番につなぎ役(よく言えばいぶし銀、悪く言えばバント要員)を置きます。


例) 井端ー荒木ー福留ーウッズーアレックスー森野ー井上ー谷繁ー投手


このメリットは得点圏に走者を置いてクリーンアップに回せることだと、従来説明されてきました。確かに、初回井端選手が出塁して、荒木選手が送って、得点圏で福留選手・ウッズ選手は嫌ですよね。確かにこの主張、正しそうです。ですが、皆さん、考えてみて下さい。このケースが起こりうるのは初回だけではないでしょうか?例えば、中盤5回。谷繁選手が出塁し、投手が送りバント。井端選手が進塁打で二死三塁となり、二番打者。荒木選手が凡退したらクリーンアップに回せません。この説における二番打者の役割はクリーンアップへ“つなぐ”ことのはずだったのに、繋げないではないですか。このように伝統的通説は1番から始まるイニングのことしか考えていない説なのです。

 


<2>2番最強打者説


アメリカ由来で、ここ数年の日本球界で騒がれ始めるようになった革新的なこの説では、2番にチーム最強の打者を置きます。


例) 井端ーウッズー福留ーアレックスー森野ー井上ー荒木ー谷繁ー投手


この説はアメリカ由来であり、詳しいところは分かりませんが、一般的に主張されているのは、良い打者には数多くの打席数を与えるべきであるという考えです。チームとしていかに得点するかを考えるとき、荒木選手よりもウッズ選手に数多く打席を与える方が良いのは当然です。その論理を突き通すのなら、1番最強説ではないのか、と思いますが、おそらくそれではソロ本塁打を量産すると危惧しているのでしょう。とはいえ、2番ウッズ選手でももったいないような気がしてしまうのが日本人です。そこで、日本人にもなじみやすいのではと筆者が考えるのが次の説です。

 


<3>2番強打者説


この説は、2番につなぎ役でも最強打者でもない、強打者を置きます。では強打者とは誰か?クリーンアップのうち、2番目と3番目に打てるバッター(たいていの場合3番と5番)のことです。


例)井端ー福留ーウッズーアレックスー森野ー井上ー荒木ー谷繁ー投手
  井端ーアレックスーウッズー福留ー森野ー井上ー荒木ー谷繁ー投手


要するに、クリーンアップを3・4・5番ではなく、2・3・4番に「移動」させるということです。その分、5番には従来の6番が入るわけですから、ある意味5番軽視説とも言えるかもしれません。これなら、「ウチのチームは層が薄いから、2番に強打者を置ける余裕がない」という2番強打者説を否定するためによく使われる論理(言い訳)は通用しません。2番を重視する分、5番を軽視するわけですから。では、このメリットは何か?<1>説で行った議論を再び行います。初回に1番が出塁した場合、当然クリーンアップに回ります。<1>説と異なり、2番がバントで得点圏に進めてはいませんが、クリーンアップには長打力がありますし、1番には走力があるのですからあまり問題ありません。では、<1>説で問題となった下位打線がチャンスを作った場合はどうでしょうか?二死三塁で2番に回っても、従来の3番打者や5番打者が2番に座っているわけですから、問題なしというわけです。

 


以上の通り、筆者としては<3>2番強打者説を推していきたいと考えています。そもそも<1>説は、本来いかにクリーンアップへ“つなぐ”かを考えているわけですよね。それならば、クリーンアップは3・4・5番という固定観念を捨て、2番をクリーンアップに組み入れてしまう方がより確実につなげるわけです。

 

現在の<1>説の論者はいかにクリーンアップへ“つなぐ”ための打線を組むかではなく、いかに2番にバントをさせるための打線を組むかを考えている気がします。いわば「バントありき」の思考をしているということです。ですが、送りバントが得点の期待値を下げることがデータとして表れている現在、「バントありき」の思考は論外です。まずは、「バントありき」の思考を捨てたうえで、いかにクリーンアップへ“つなぐ”かを考えることが大切だと思います。その際、<3>説で採用したような「クリーンアップの移動」という発想を用いると、日本人にもなじみやすい「2番(最)強打者説」観を作り出すことができるのではないでしょうか。

 


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